Web制作会社にとって、Webサイトを納品した後もクライアントとの関係を継続できるかどうかは、経営の安定性を左右する重要な課題です。
スポット案件が中心の場合、ひとつの制作が終わるたびに、次の売上をつくるための新規案件を獲得しなければなりません。一方、保守契約を結んでいても、毎月の対応内容がクライアントに見えなければ、費用を見直される可能性があります。
継続契約につなげるために大切なのは、作業量を増やすことだけではありません。この会社に任せておけば、公開後もきちんと見てもらえるという安心感をつくることです。
この記事では、Web制作会社がスポット案件への依存を減らし、保守契約に無理なく付加価値を加える方法を解説します。
Web制作会社がスポット案件に依存しやすい理由
Web制作会社がスポット案件に依存しやすい最大の理由は、Webサイトの納品が契約の終了地点になりやすいからです。
Web制作には、企画、設計、デザイン、コーディング、公開という分かりやすい工程があります。Webサイトを公開し、クライアントへ納品すれば、制作業務は完了します。公開後の運用や改善が契約に含まれていなければ、そのクライアントから得られる売上もそこで終了します。
納品後に提供するサービスが決まっていない
Webサイトは、公開後も情報の更新、アクセス状況の確認、導線の改善、コンテンツの追加などが必要です。しかし、制作会社側が公開後の支援内容をサービスとして用意していなければ、クライアントとの関係は納品時点で途切れやすくなります。
クライアントから相談が来るのを待っているだけでは、更新や改修が必要になるまで新しい仕事は発生しません。公開後に何を支援できるのかを制作会社から示さなければ、継続契約へつながりにくいのです。
クライアントも納品によって依頼が完了したと考える
クライアントにとっても、Webサイトの公開はプロジェクトの完了を意味します。制作会社から公開後の提案がなければ、継続的に支援を受けるという発想を持たないまま契約が終了します。
Webサイトに改善すべき点があったとしても、クライアント自身が課題に気づくとは限りません。その結果、Webサイトは公開したままになり、制作会社へ相談する機会も失われます。
売上をつくるために次の新規案件が必要になる
納品後の支援が契約になっていなければ、制作会社は次の売上を得るために、新しい案件を獲得しなければなりません。
- ● 新しい見込み客を探す
- ● 問い合わせを獲得する
- ● ヒアリングや提案を行う
- ● 見積書を作成する
- ● 他社との比較検討に対応する
そして、新しい案件を受注して納品しても、継続支援がなければ再び次の案件を探すことになります。
つまり、Web制作会社がスポット案件に依存しやすいのは、Web制作が単発の仕事だからではありません。納品後に提供する支援が仕組み化されておらず、クライアントとの契約が制作完了と同時に終わってしまうからです。
Webサイトを作れるだけでは選ばれにくくなっている
生成AIやノーコードツールの進化により、専門的な知識がなくてもWebサイトを制作できる環境が整いつつあります。簡易的なサイトであれば、クライアントが生成AIなどを活用し、自社内で構築・運用することも現実的な選択肢になりました。
しかし、生成AIやツールだけで、成果につながるWebサイトを作ることには限界があります。事業や顧客への理解をもとにした戦略設計、ブランドを適切に表現するデザイン、使いやすさを考えた導線設計、要件に応じたシステム開発などは、現在も専門的な知識と経験が求められる領域です。
そのため、Web制作会社の存在意義がなくなるわけではありません。専門的な支援を必要とする企業や、Webサイトを事業成果につなげたい企業からのニーズは、今後も続くと考えられます。
一方で、デザインや機能に強いこだわりがなく、まずはWebサイトがあればよいと考える企業にとっては、外部の制作会社へ依頼する必要性が以前より見えにくくなっています。外注する明確なメリットがなければ、生成AIや既存のツールを使って社内で対応するという判断にもなり得ます。
さらに、外注することが決まったとしても、数多くのWeb制作会社の中から自社を選んでもらわなければなりません。これからのWeb制作会社には、Webサイトを制作できるというだけでなく、他社との違いが伝わる強みや、依頼することで得られる付加価値が必要です。
そこで重要になるのが、Webサイトを作って納品するだけではなく、公開後の活用や改善まで支援する姿勢です。
保守契約を結んでも安心とは限らない
公開後の支援として、Webサイトの納品後に月額の保守契約を提供している制作会社も多いでしょう。
一般的な保守契約には、次のような業務が含まれます。
- ● サーバーやドメインの管理
- ● CMSやプラグインの更新
- ● バックアップ
- ● セキュリティ対策
- ● 軽微な修正
- ● 障害発生時の対応
これらは、Webサイトを安定して運用するために必要な業務です。しかし、問題が起きていないときほど、その価値がクライアントから見えにくくなります。
何も起きていないことの価値は伝わりにくい
サーバーを適切に管理し、CMSを更新し、トラブルが起きにくい状態を保つことには価値があります。ただし、クライアントから見える作業が少なければ、毎月何をしてもらっているのか分からないと感じる可能性があります。
制作会社が必要な管理を行っていても、実施内容や成果が見えなければ、クライアントは費用対効果を判断できません。経費を見直す場面では、価値が見えにくい契約ほど削減候補になりやすく、実際には必要な保守業務であっても、クライアントから不要なコストと判断されるおそれがあります。
保守契約の価値が伝わりにくくなる例
・更新依頼がなく、数か月連絡を取っていない
・サーバー管理やバックアップの実施内容を報告していない
・契約に含まれる作業範囲をクライアントが把握していない
・Webサイト公開後の状況を共有していない
・問題が起きたときだけ連絡する関係になっている
保守契約を継続してもらうために必要なのは、解約を防ぐための囲い込みではありません。クライアントが毎月、契約を継続する意味を実感できる状態をつくることです。
継続契約につながる付加価値とは
クライアントが契約を継続する理由は、毎月の作業量だけではありません。この会社に任せておけば大丈夫だと感じられることも、大切な価値です。
例えば、次のような状態をつくることで安心感につながります。
- ● Webサイトの状況を継続的に確認してもらえる
- ● 問題や変化があれば知らせてもらえる
- ● 自社だけでは気づけない点を教えてもらえる
- ● 困ったときに、自社の状況を理解した相手へ相談できる
- ● Webサイトを放置せず、改善について考えてもらえる
つまり、保守契約へ加える付加価値は、単なる追加作業である必要はありません。Webサイトを継続的に見守り、必要なときに提案できる関係そのものが付加価値になります。
定期的な接点が次の相談を生む
納品後に連絡する機会がなければ、クライアントとの関係は少しずつ薄くなります。Webサイトについて新しい課題が生まれても、最初に思い出してもらえるとは限りません。
一方、毎月または四半期ごとに状況を報告していれば、次のような相談が生まれやすくなります。
- ● 新しいサービスページを追加したい
- ● Webサイトからの問い合わせを増やしたい
- ● 採用ページを改善したい
- ● 検索からの流入を増やしたい
- ● Web広告を始めたい
- ● ランディングページを制作したい
定期的な接点は、毎回何かを売り込むためのものではありません。クライアントの状況を把握し、必要になったタイミングで適切な提案をするための土台です。
付加価値は提供する側の負担も考える
保守契約へ追加できる付加価値には、広告運用、SNS運用、SEO支援、コンテンツ制作など、さまざまな選択肢があります。どれもクライアントにとって価値のあるサービスですが、制作会社側の負担が大きすぎると継続できません。
SNS運用では、企画、素材作成、投稿、確認などの継続的な作業が発生します。広告運用では、専門知識に加え、数値の確認や調整が必要です。付加価値を増やすために担当者の業務が圧迫されれば、制作案件にも影響します。
保守サービスへ新しい内容を加えるときは、クライアントにとっての価値だけでなく、次の条件も確認します。
継続しやすい付加サービスの条件
・毎月無理なく提供できる
・作業時間をある程度予測できる
・特定の担当者だけに依存しない
・複数のクライアントへ展開できる
・目に見える成果物を渡せる
・次の改善提案につながる情報を得られる
この条件に合う選択肢のひとつが、アクセスレポートと簡単な改善提案です。
アクセスレポートが保守契約と相性のよい理由
アクセスレポートは、Webサイトの状況をデータで確認し、その結果をクライアントへ伝えるものです。保守契約に組み込むことで、目に見えにくかった継続支援を成果物として届けられます。
毎月、目に見える成果物を提供できる
サーバー管理やセキュリティ対策は重要ですが、その価値を毎月目に見える形で示すことは簡単ではありません。
アクセスレポートであれば、訪問者数、流入経路、閲覧されたページ、問い合わせなどを整理して届けられます。クライアントに、Webサイトの状況を継続的に確認していることが伝わります。
GA4を操作できないクライアントにも伝えられる
GA4を導入していても、クライアント自身が日常的に確認しているとは限りません。項目が多く、どの指標を見ればよいか分からない場合もあります。
制作会社が必要な情報を整理してレポートにすれば、クライアントがGA4の画面を操作しなくても、Webサイトの状況を把握できます。GA4の閲覧権限を追加せず、報告に必要な範囲だけを共有したい場合にも適しています。
Webサイトを放置しない理由をつくれる
Webサイトは公開しただけで成果が確定するものではありません。公開後のデータを確認することで、初めて見えてくる課題があります。
- ● 想定していたページが閲覧されていない
- ● 検索からの流入が増えていない
- ● スマートフォンからの成果が低い
- ● 広告から流入しても問い合わせにつながっていない
- ● 特定のページにアクセスが集中している
- ● 問い合わせなどの成果を正しく計測できていない
アクセスレポートは、現状を報告するだけでなく、Webサイトを改善し続けるきっかけになります。
サービスに組み込む報告内容を決める際は、クライアント向けWebレポートの作り方で、構成や提出方法を確認できます。
アクセスレポートから改善提案につなげる
Web制作会社にとってのメリットは、レポートを毎月提出できることだけではありません。アクセスデータから見つかった課題を、制作会社の得意な支援へつなげられる点にもあります。
レポートから改善提案につなげる例
・特定ページからの離脱が多い場合:ページ構成や導線を見直す
・スマートフォンの成果が低い場合:モバイル画面の使いやすさを確認する
・検索流入が少ない場合:SEOやコンテンツ制作を提案する
・広告流入後の成果が低い場合:ランディングページを改善する
・問い合わせ率が低い場合:フォームやCTAを見直す
・成果を計測できていない場合:GA4のキーイベント設定を確認する
大切なのは、レポートを売ることではありません。データを共通の材料にして、クライアントとWebサイトの課題について話せる状態をつくることです。
改善が必要になったとき、サイトの構成や制作の経緯を理解している会社が継続して支援できれば、クライアントにとっても新しい業者を探す負担がありません。制作会社にとっては、無理な営業を行わず、必要性のある追加提案につなげられます。
手作業のレポート作成には負担がある
アクセスレポートは保守契約の付加価値として有効ですが、すべてを手作業で作成すると制作会社の負担が大きくなります。
一般的な月次レポートでは、次のような作業が発生します。
- GA4で対象期間を指定する
- 主要な指標を確認する
- 前月や前年同月のデータと比較する
- 流入元やページ別のデータを確認する
- Search Consoleで検索データを確認する
- 数字をExcelやPowerPointへ転記する
- 表やグラフを整える
- 数値の変化についてコメントを書く
- 内容を確認してクライアントへ提出する
1社であれば対応できても、5社、10社と増えるほど、月末や月初に作業が集中します。GA4には多くの指標や画面があるため、担当者によって確認する項目やレポートの品質が変わる問題もあります。
付加価値として始めたレポートが大きな負担になってしまえば、サービスとして継続できません。確認する指標、資料の構成、コメントの書き方、提出方法をできるだけ定型化することが重要です。
手作業の負担を見積もるには、レポート作業の工数削減シミュレーターを使い、定型化を検討する材料にしてください。
InsightBaseでレポート業務を効率化する
レポート作成ツール「InsightBase」は、GA4、Search Console、Google広告、Meta広告のデータを確認し、クライアント向けレポートの作成と共有を支援するサービスです。
クライアントごとにレポート設定を保存し、対象期間を選んで定型レポートを表示できます。レポート作成の手順をそろえやすいため、複数クライアントへ展開する場合にも適しています。
GA4の主要データを網羅的に確認できる
GA4レポートでは、サイト全体の主要指標に加え、流入、Search Consoleの検索データ、キーイベント、ランディングページ、ページパフォーマンス、デバイス、地域などを確認できます。
GA4の複数画面を一つずつ探しながら、毎回見るべき指標を選ぶ負担を減らせます。アクセス解析に慣れていない担当者が、サイト全体の状況を確認する際にも利用できます。
AIコメントで報告文の下書きを作成できる
取得したデータをもとに、特筆すべき数値や変化、全体状況、総括、次のアクションなどのコメント案を作成できます。
AIコメントは、そのまま提出するのではなく、担当者が内容を確認し、クライアントの施策や状況に合わせて編集します。ゼロから文章を考える負担を減らしながら、制作会社自身の知見を加えられます。
クライアントをGA4に接続させずに共有できる
InsightBaseで作成したレポートは、PDF、PowerPoint、ログイン不要の閲覧専用URLで共有できます。
クライアントはGA4の操作を覚えたり、複数の管理画面を開いたりする必要がありません。報告先や用途に合わせて、完成版はPDF、会議で補足する場合はPowerPoint、ブラウザで手軽に確認してもらう場合は共有URLという使い分けができます。
共有URLは、発行時点の内容を保存し、有効期限の設定と共有停止ができる方式です。URLを知っている人が閲覧できるため、送信先や取り扱いには注意してください。
広告を含めた支援にも広げられる
Google広告やMeta広告を運用しているクライアントでは、広告費、クリック、媒体上のコンバージョンと、GA4で計測した広告流入セッションやキーイベントを確認できます。
Webサイトのアクセス状況だけでなく、広告からサイト内成果までを含めた報告へ広げることができます。ただし、広告媒体とGA4では計測や成果の帰属基準が異なるため、数字が一致しないことだけを理由に計測不備と判断しないことが重要です。
保守サービスへの組み込み方
最初から大規模なコンサルティングサービスを始める必要はありません。現在の保守契約へ、対応できる範囲から段階的にアクセスレポートを加えます。
パターン1:レポートのみ提供する
毎月または四半期ごとに、アクセスレポートをPDFや共有URLで提供します。まずは、Webサイトの状況を継続的に確認していることを可視化する方法です。
パターン2:レポートに簡単なコメントを付ける
アクセス数の変化、注目すべきページ、検索流入の傾向などを短いコメントとして添えます。クライアントが数値の意味を理解しやすくなり、制作会社の知見も伝えられます。
パターン3:短時間の定例報告を行う
レポートをもとに、月1回または四半期に1回、オンラインで状況を共有します。会話を通してクライアントの事業状況や今後の施策を把握できるため、必要な改善提案にもつながります。
パターン4:改善提案まで含める
データから見つかった課題に対して、具体的な改善案を提示します。改善作業を保守範囲に含める方法と、別途見積もりにする方法があります。
どこまでを月額料金に含めるか、追加費用が発生するのはどのような作業かを、あらかじめ明確にしておくことが重要です。
小さく始める場合の提供例
・頻度:月1回または3か月に1回
・成果物:アクセスレポートのPDF
・コメント:注目したい変化を3点まで記載
・改善提案:優先度の高い内容を1点提示
・追加作業:改修が必要な場合は別途見積もり
レポートを送るだけで終わらせない
アクセスレポートを提供するだけで、継続契約が保証されるわけではありません。大量の数字を並べただけでは、クライアントが価値を理解しにくい場合があります。
レポートでは、少なくとも次の3点を伝えます。
1. 今回、何が起きたのか
前期間と比較し、アクセス数、検索流入、キーイベントなどがどのように変化したかを説明します。すべての数字を読み上げるのではなく、重要な変化を絞ります。
2. 何を確認する必要があるのか
数字が変化した理由を、データだけで断定できるとは限りません。確認できた事実と、考えられる要因を分けて伝えます。
3. 次に何をするのか
改善案は、一度に多く提示するより、優先度の高い内容を1つか2つに絞ります。誰が、何を、いつまでに確認するかが分かる形にすると、次の行動につながります。
クライアントへ伝えるコメント例
今月は自然検索からのセッションが前月より増加しました。特にサービスページへの流入が増えていますが、問い合わせ数は横ばいです。次月はサービスページから問い合わせフォームまでの導線と、スマートフォンでのフォーム表示を確認します。
レポートは成果物であると同時に、クライアントとの会話を始めるための材料です。数字を報告して終わるのではなく、今後の事業やWebサイトについて話す接点として活用してください。
改善提案を文章にまとめる際は、レポートの考察・コメントの書き方を参考に、事実と次の対応をつなげてください。
まとめ:制作後も相談されるWeb制作会社へ
AIやノーコードツールによって、Webサイトを作る手段は増えています。その中でWeb制作会社が選ばれ続けるためには、制作技術だけでなく、公開後も状況を見守り、必要な改善を提案できることが重要です。
ただし、付加価値を提供するために、制作会社側の負担が大きくなりすぎては継続できません。
アクセスレポートは、提供手順を定型化しやすく、目に見える成果物を届けられ、次の改善提案にもつなげやすい付加価値です。まずは現在の保守契約に、月次または四半期ごとのレポートを加えるところから始められます。
InsightBaseでは、GA4やSearch Consoleなどの主要データの確認から、AIによるコメント案の作成、PDF・PowerPoint・閲覧専用URLでの共有までを一つの流れで進められます。
無料プランで実際のデータを確認し、自社の保守サービスへ無理なく組み込めるか試してみてください。
