ボタンクリックは全部CVではない
GTMやGA4で計測を始めると、まず取りやすいのがボタンクリックです。
そのため、お問い合わせボタン、電話ボタン、資料請求ボタン、今すぐ購入ボタンなどを、そのままCVとして扱いたくなることがあります。
ただ、ここで気をつけたいのは、クリックと成果は同じではないという点です。
ボタンが押された時点では、まだ問い合わせが完了していないこともあれば、資料請求が送信されていないこともあります。
決済画面に進んだだけで、購入完了には至っていないケースも普通にあります。
つまり、ボタンクリックはよく取れる数字ですが、取れることと、成果として扱ってよいことは別です。
この整理が曖昧なままだと、CV数は増えて見えるのに、実際の問い合わせや売上につながっていない、というズレが起こりやすくなります。
(例)同じクリックでも意味の強さは違う
・お問い合わせフォームを開くボタン = まだ入力前
・電話番号タップ = 問い合わせ意欲は高いが、通話成立までは不明
・資料ダウンロード開始ボタン = 資料取得前のこともある
・決済開始ボタン = 購入意欲は高いが、購入完了ではない
1) 本CV と 中間CV を分けて考える
実務では、まずこの整理をしておくと混乱しにくくなります。
本CVは、問い合わせ完了、購入完了、予約完了など、成果が確定した状態です。
一方で、中間CVは、その一歩手前の強い行動です。
ボタンクリックは、多くの場合、中間CVになりやすいです。
もちろん例外はありますが、いきなり本CVとして扱うより、まずは強い行動として切り分ける方が判断しやすくなります。
2) クリックをCVにするときに見るべき基準
ボタンクリックをCVにしてよいかどうかは、ボタンの見た目ではなく、そのクリックの後にどこまで成果に近づいているかで判断します。
クリック後にほぼ完了と言えるのか、それともまだ途中なのか。
この差を見ないまま全部CVにしてしまうと、広告評価もサイト改善もズレやすくなります。
CVにしやすいクリック と しにくいクリック
ここでは、現場でよくあるクリックを、成果への近さで整理します。
完全に一律ではありませんが、考え方の目安として見ると判断しやすくなります。
1) お問い合わせボタンのクリック
これは、そのまま本CVにするには弱いことが多いです。
なぜなら、お問い合わせフォームを開いただけ、入力画面へ進んだだけ、というケースが多いからです。
フォーム送信完了まで取れるなら、そちらを本CVにする方が自然です。
お問い合わせボタンのクリックは、中間CVとして扱うと分かりやすくなります。
(例)お問い合わせ導線の分け方
・お問い合わせボタンクリック = 中間CV
・フォーム送信完了 = 本CV
このように分けると、フォーム途中の離脱も見やすくなります。
2) 電話ボタンのクリック
電話ボタンは少し悩ましい指標です。
特にスマートフォンでは、タップ時点でかなり強い問い合わせ意欲が出ていると考えられます。
ただし、実際に電話がつながったか、問い合わせになったかまでは分からないこともあります。
そのため、一般的には中間CVとして扱うのが安全です。
ただし、店舗型ビジネスなどで電話が主要CVであり、他に完了データが取れない場合は、運用上のCVとして採用する判断もあります。
その場合は、レポート上で電話タップであることを明記した方が誤解を防げます。
3) 資料請求ボタンのクリック
これも、お問い合わせボタンと同じで、クリック時点ではまだ完了していないことが多いです。
フォームを開いただけ、確認画面へ進んだだけ、外部フォームへ遷移しただけ、というケースがあるためです。
一方で、クリックと同時に資料ダウンロードが始まり、取得完了までほぼ同義という設計なら、CVとして扱いやすくなることもあります。
つまり、資料請求ボタンという名前だけで決めるのではなく、押した後に何が起こるかで判断する必要があります。
(例)資料請求の扱い方の違い
・フォーム入力が必要な資料請求ボタン = 中間CVになりやすい
・クリックと同時に資料取得が完了する導線 = 本CVに近い
ボタン名ではなく、完了条件で判断するのがポイントです。
4) 決済開始ボタンのクリック
決済開始は、かなり強い行動です。
商品購入ページから決済画面へ進む時点で、購入意欲は高いと見てよいでしょう。
ただし、それでも購入完了ではありません。
支払い方法の入力で離脱する人もいれば、エラーや不安で戻る人もいます。
そのため、決済開始は中間CVとして非常に重要ですが、本CVとは分けて持つのがおすすめです。
この2つを分けるだけで、購入率の改善ポイントがかなり見えやすくなります。
5) クリックそのものを本CVにしてよいケース
例外的に、クリックをそのまま本CVにしやすいケースもあります。
たとえば、クリックと同時に処理が完了し、その後の離脱余地がほぼない場合です。
ただし、実務ではそこまで単純な導線は多くありません。
少しでも途中離脱や未完了の可能性があるなら、本CVと中間CVを分ける方が安全です。
- ● クリックと同時に資料ダウンロードが完了する
- ● クリックと同時に完了イベントが確実に返ってくる
- ● そのクリック以外に完了判定の手段がなく、運用上も意味が明確
数字は取れているのに判断を間違うパターン
ボタンクリックをCVにすると、数字は取りやすくなります。
ただ、そのぶん判断ミスも起こりやすくなります。
現場でよくあるパターンを見ておきます。
1) CVが増えたのに、問い合わせ件数は増えていない
お問い合わせボタンのクリックをCVにすると、改善前よりCV数が大きく見えることがあります。
しかし、実際にはフォーム送信完了が増えていないケースがあります。
この場合、ボタンの押されやすさは上がっていても、成果は増えていません。
クリックを成果と見誤ると、改善が成功したように見えてしまいます。
2) 広告の自動入札が弱いCVに最適化される
広告媒体で弱いクリックをCVとして設定すると、そのクリックを増やす方向に配信が寄ることがあります。
その結果、問い合わせ完了や購入完了ではなく、ボタンを押しやすいユーザーばかり集めてしまうことがあります。
特に、決済開始と購入完了を分けずに最適化すると、途中離脱が多いまま配信が続くこともあります。
(例)数字の見え方のズレ
・決済開始は増えた
・購入完了は増えていない
このとき評価すべきなのは、広告が良いかどうかだけではなく、決済導線の離脱が増えていないかです。
3) レポート内で違う強さのCVを一緒に足してしまう
電話タップ、資料請求ボタンクリック、問い合わせ完了、購入完了を全部まとめてCVとして扱うと、レポートが非常に読みにくくなります。
強さの違う行動が混ざるため、何を改善すべきか分からなくなるからです。
数字はまとまって見えますが、実務ではむしろ判断しづらくなります。
4) クライアントや上司との会話が噛み合わなくなる
自分は電話タップをCVとして見ているつもりでも、相手は問い合わせ成立件数だと思っていることがあります。
ここがズレると、CPAやCVRの評価も噛み合わなくなります。
ボタンクリックをCVにするなら、何を数えているのかを言葉で明記することが大切です。
実務で失敗しにくい整理方法
ボタンクリックをどう扱うか迷ったときは、いきなりCVか非CVかの二択で考えない方が整理しやすいです。
現場では、次の順番で分けるのがおすすめです。
手順1:クリック後に完了まで何段階あるかを見る
まず、そのクリックの後にどれだけ工程が残っているかを見ます。
入力、確認、送信、決済、予約確定など、まだ段階が多いほど、クリック単体は本CVにしにくくなります。
手順2:本CV と 中間CV を分けて命名する
次に、同じCVという言葉でまとめず、役割を分けて持ちます。
本CVは完了系、中間CVは強い途中行動です。
名前を分けておくと、GA4でもLooker Studioでも説明しやすくなります。
(例)命名の分け方
・お問い合わせ完了 = 本CV
・お問い合わせボタンクリック = 中間CV
・決済開始 = 中間CV
・購入完了 = 本CV
手順3:レポートでは分けて見せる
クリック系を使うなら、レポートでも分けて見せた方が実務では便利です。
ひとまとめのCVより、完了件数と途中行動件数を分けて見る方が、どこで落ちているかが分かりやすくなります。
- ● 本CV = 問い合わせ完了、購入完了、予約完了
- ● 中間CV = 電話タップ、資料請求ボタンクリック、決済開始
- ● 補助指標 = CTAクリック、フォーム開始、スクロールなど
手順4:広告最適化に使うCVは特に慎重に決める
GA4で見るだけなら中間CVも便利ですが、広告媒体の最適化に使うCVは特に慎重に選んだ方がよいです。
弱い行動を最適化対象にすると、成果に届きにくいユーザーを集めやすくなることがあるためです。
まずは本CVを優先し、件数が少なすぎる場合に限って中間CVを補助的に使う、という考え方の方が安定しやすいです。
手順5:定義を必ず注記する
最後に大事なのが、レポートや共有資料で定義を書くことです。
電話タップをCVとして見ているのか、問い合わせ完了をCVとして見ているのか、決済開始をCVとして見ているのか。
これを書いておくだけで、数字に対する認識違いがかなり減ります。
(例)注記の入れ方
・本レポートのCVは、お問い合わせ送信完了を集計しています
・電話タップ、資料請求ボタンクリック、決済開始は中間CVとして別表示しています
まとめ:クリックの強さを分けて見ると判断が安定する
ボタンクリックは取りやすく、現場でも便利な指標です。
ただし、取りやすいからといって、そのまま全部をCVにしてしまうと、数字は増えても判断を間違えやすくなります。
お問い合わせボタン、電話ボタン、資料請求ボタン、決済開始ボタンは、いずれも強い行動ではありますが、多くの場合は完了そのものではありません。
そのため、まずは本CVと中間CVを分けて持ち、レポートでも分けて見るのがおすすめです。
大事なのは、ボタンクリックをCVにするかどうかではなく、そのクリックが成果にどれだけ近い行動なのかを正しく扱うことです。
この整理ができると、広告評価もサイト改善も、かなりブレにくくなります。